悪ノリ★リレー!第十六話:「逆転幸せホームラン!」

 
朝の昭栄の邪魔があまりにも悔しかったせいで、その日学校で私は泣き濡れていた。めそめそと鬱陶しく泣き落ち込む私にクラスの友人も途方に暮れるほどに。(っていうか実際は放っとかれたんだけどね!「相手にしてらんないわ」とか言われたよ!うええん、なんて友達甲斐のない奴だ!)
私ってすごい可哀相・・・遊園地のチケットを譲って楽しみは減るわ、カズさんを堪能しようとしたら昭栄に邪魔されるわ、学校でも薄情な友人に放っておかれて慰めてくれる人は居ないわ・・・めそめそめそめそめそめそめそめs(エンドレス)

いいもん、それでも私強く生きていくもん!まず手始めにヤケ食いじゃあ!と放課後にケーキ屋さんに行こうと、渋る友人を強引に引っ張って行く事を勝手に決定する。
「やーよ、私今ダイエット中なのに!」
いーじゃん、ちょっとくらい付き合ってよ、つか傷心の私を慰めろ!
「嫌だってば、それに今日はデートがあるの!」
うわ!友達より彼氏を取るわけ!?
「当たり前でしょ、アンタの鬱陶しい愚痴に付き合いたくないもん。今から彼の学校で待ち合わせなのー」
ハートマークを飛ばしながら「そういう事だから」と逃げるように走っていった友人の後姿に、「薄情者ーー!」と叫んでガックリと肩を落とした。
くそう、逃がしたか・・・ちぇー、なんだよなんだよ、いいよなぁ、恋人居る奴はさ!はぁあ〜、私の王子様(古)は一体どこに居るんだろう?・・・って居るじゃん、王子様はカズさんだよ!カズさんが恋人だったら私でも恋人を取るね!確実にね!
そんな勝手な妄想を頭の中で繰り広げてみたら、もうその世界にどっぷりと浸ってしまって、うへへとニヤけてしまう。

「何アホ面しとうとや」
へぁ?誰がアホ面だとぅ!?って、与っさんじゃん。何でこんなとこに居るの?
声を掛けられ向けた視線の先には、私の家の玄関先の壁に凭れるようにして立っている与っさんの姿が。
うっわ、珍しいー。与っさんが私の家に来るのって初めてじゃない?
「そうやったか?」
うん、そうだよー。ってか、まだ4時だよ?この時間だと部活あるでしょ、何で居るの?
「今日からテスト週間で部活ば休みじゃ。」
へえ、うちの学校は来週からだよ。1週間早いね。で?本当どうしたの、何か用でもあった?
「ああ、あのな、コレ・・・」
へ?
差し出されたのは、動物園のチケット。え、え?何、もしかして与っさんコレ私にくれるとか言う?いやん、デートのお誘い!?きゃv
「アホ、違うわ。タカがな、お前に、やて。こん前の遊園地の礼で、ってな」
は?タカって昭栄?礼?・・・・・・・・・・・何で。
「おい、なしそげに声ば低ぅなると?」
だって昭栄ってば私の事敵対視してるもん。なのに動物園のチケットくれるなんてありえなーい!何か裏があったりとかするんじゃないの。
「無い無い、それは無か。アイツが裏で企むような奴やと思うと?」
んー、そりゃあね、単純馬鹿っぽいからそこまで頭が回るような奴じゃないとは思うけどさ〜、変じゃん、昭栄が私にお礼なんて、ウッソだぁ〜。
「酷い言われようっちゃな・・・;まぁ、素直に貰っといたれて」
う〜〜〜〜ん。
「そげに悩むようなこつか?」
でもさぁ、これ貰ってもどうすんの。私一人で行けって?そんなのつまんないし寂しいじゃん。
「あー、あのな、それ、俺とカズも行くけん」
ピクっ。な、なんですと?カ、カカカカカカズさんもーーー!?
「どもりすぎじゃ。だけんな、今度の土曜とか暇か?」
暇です暇暇すんごい暇!ってか、用事があろうが何だろうが蹴っ飛ばして行くよ、私!!!
「・・・そ、そうか;なら土曜空けとけよ、駅前に10時な」
了解しましたーーー!そうと決まれば早速着ていく服買いに行かなきゃ!与っさん、行くよ!
「は!?なし俺まで!?」
カズさん好みの服をチェキラーーー!知ってるでしょ、カズさんの好み。服見繕ってよ!
「一人で行け!ってコラ、人ん話聞けーーー!!」
嫌がる与っさんを問答無用で引き摺り街へ繰り出し可愛い服を購入。よし、早く来い来い土曜日!ああん、待ち遠しいーーvv
買い物中に、柊さんから『楽しんできてくださいねv』とメールが来ていた事に気が付いた。あ、やっぱりね。昭栄じゃなくて柊さんが計画してくれたんだ。さすが!さすが私の見込んだ子だわ!ありがとーーーvv
 



そして来ました、土曜日が。るったるんるんとスキップで駅前に向かい、約束の時間の30分前に到着。入念に格好をチェックしてナチュラルメイクで準備バッチリ☆うふうふふうふふふふvと満面の笑みで待っていると、人波の向こうから麗しいお姿を発見!はあぁんvカズさんだーーー!!あ、与っさんも居る。2人で一緒に来たんだ。なんだ、それなら与っさんの家に突撃して一緒に行きたかったのに!(オイ)
「なあ、やっぱり俺行くのやめといた方が良かやないか?」
「ここまで来といて何言うとうと。朱里にもカズば来るて言うてあるけん、お前が来なアイツ落ち込んでまうとやろ」
「ばってん・・・そげに話もしたこつ無か人やしなぁ」
「気にするこつなか。アイツ女やなかけん、適当にあしらっとけばよかじゃ」
・・・・・・何気に失礼な言葉が聞こえてきてるんですけど、与っさん?
にーっこりと笑みを称えて、待ち合わせの場所から少し離れた場所で立ち止まって話している2人の方へと歩み寄る。

 
どーも、こんにちはーv
「え、あっ!?ど、どーも・・・」
「朱里、もう来とったんか?」
ええ、来てましたよー。(ついでに与っさんの声も聞こえてきたよ、私が女じゃないってどういうこっちゃ、ゴラぁ)(←小声でカズさんに聞こえないように威嚇)
「や、違、その、言葉のアヤっちゅうかやな・・・;」
にっこりv
『帰ったら覚えとけよこの野郎』と無言で訴えれば、与っさんは青褪めてしおしおと縮んだ。
「お、おい、ヨシ?どげんしたと?」
「い、いや・・・何でもなか・・・;さあ、ちゃっちゃか行くかー!」
スタスタと早足で駅構内へと歩いていく与っさんを慌てて追うカズさんの後を追って、私も歩いて行く。
 
一緒に動物園に行けるのは嬉しいんだけど、何だか微妙。今更思ったんだけど、カズさん、きっと私とは喋らないと思うのね。さっきまでは浮かれきっててそんな事に気付きもしなかったけれど、そう思ってちょっと冷静になった。そりゃそうだよね、前に与っさんに紹介してもらって会っただけで、話をした事もない奴と一緒に行くなんて、警戒しちゃって当然だ。今日で仲良くなれる、かなぁ?なれたらいいけど、今のカズさんの様子を見る限りじゃ無理っぽい。あ、何か落ち込む・・・  

冷静になったおかげか、はたまたそんな分析をしてしまって落ち込んだからか、いつもの暴走は押さえ込まれていて、大人しく猫を被って、着いた動物園内を見て回った。どうやらそんな私が不思議で堪らない、と云った顔で与っさんは心配げ。コソっと耳打ちしてきたりなんかして。
「おい、朱里?お前どげんした?」
ん?何が?
「いや・・・お前、今日ば騒ぎまくると思うちょったばってん、何や気味悪かくらい大人しかやし」
気味悪か、て何じゃい、コラ。
「あ、いつもの朱里やな」
・・・・・・・・・・そこでホッとすんな。与っさんの中の私ってどんなデスカ。まぁそう思われても仕方無いくらい与っさんには自分を曝け出しちゃってるけどさ。でもね、カズさんに警戒されちゃってるみたいで何だか寂しいなぁ、とか思ってたりするわけで。そんな事与っさんに言ったら気を使いそうだから言わないけど。
ね、そろそろお腹空かない?
「あー、そうやな。おーい、カズ!そろそろ飯食わんか?」
「ん、ああ。ならどっかその辺の店で、」
あ、私お弁当作ってき、た・・・、
とそこまで言ってからハッと気付く。ちょっと待て。会って2度目の女の手作り物なんか食べたいと思う人が居るだろうか?いやいや、そんなのキモイ、よね。引かれるかもだよね。うわぁあ!私いつもの癖で作って持ってきちゃったよ!だって動物園の中にある店の食べ物って美味しくないんだもん!!(失礼)それなら自分の作ったものの方がマシなんだもんー!
あわあわと慌てて、手に持っていた鞄を後ろに隠した。
「朱里?何しとうと、弁当持ってきたんっちゃろ?」
や、あの、えーとえーと、わ、忘れてきた、かも?ハハ;
「は?そんでかい鞄に入っとうとやろ、早ぅ出さんや」
ちょ、わ!い、いいって、与っさん!お店で何か買って食べよ、ね、ね!?
「何言うとうとや、持ってきとんやったら弁当のが良かじゃろ」
そう言って、与っさんはパッと私の鞄を取り上げてしまった。うあああ!与っさんのぶぁかーーー!!必死に止めようとするも、さっさと近くの屋根の下に設置してあるベンチへと座って鞄から弁当を取り出されてしまい、ガックリと項垂れる。
「朱里、さっさとこっちば来て座れ。カズ、そっちに弁当広げてくれや」
「おー。うわ、今日のも美味そうやな」
へ?
カズさんの「美味そう」という言葉にパッと顔を上げる。てか、今日のも、って?
「そういやお前、朱里が作った弁当摘んでいきよったよな」
「ん、アレ美味かった。他のんも食べてみたかったけん、嬉しか」
え、え?ええ!?ななな何!?何だ、この会話!?カズさんが私の弁当摘んで、って一体いつの事!?
驚いてスススと高速で与っさんに近寄りボソっと小声で聞いてみると、何と月曜に私が与っさんに作ったお弁当のおかずをカズさんも一口食べたとかで。
うわー!うわー!ななななんて事!私の知らない間にそんな事が!?そして、現に今、カズさんはにこやかに私が作ったお弁当を食べてくれている。「美味い」という言葉と共に。うっ嬉しい!けど照れる!すんごい恥ずかしい!でもやっぱ嬉しいーーー!!本当に嬉しい大誤算です、幸せだ・・・っ!
心の中で嬉しい涙を流しつつ、食べてくれるカズさんの顔をにこにこと笑って見つめる。あっという間に全部平らげ、お礼を言われてしまって恐縮です!
それからの私が上機嫌に戻ったのは言うまでも無いだろう。
 

「腹も膨れたこつやし、後見て回ってなかとこ行くか」
あ、私ペンギン見たい!
「ならそこ行くか」
お弁当のおかげでカズさんの緊張も解れたのか、午前中は一切私と話をしなかったというのに色々話せて、お弁当様様だ。作ってきて良かった!私、えらい!
この動物園のペンギンは気温の調節された館内にあって、中はとても涼しかった。ちょうど餌やりの時間で、飼育員のお兄さんに「くれくれ」と手をパタパタさせていたりしてとても可愛い。しかも、餌を貰いに行こうと慌てたペンギンが滑って転んでしまったりして大笑い。
あはははっ!すっごい可愛いー!
「ばりドジな奴っちゃなー」
「あの転んだペンギン、朱里にそっくりったい」
へ!?何で!どこが!
「何も無かとこでスッ転ぶとこ。お前、さっきここ入る時ばドアんとこで躓いて転けそうになっちょったじゃろ」
「ぶふっ!たっ確かにあん転び方ば転んだペンギンとそっくりやな、あはは!」
カっカズさんまでそんなに笑うなんて酷いぃーー!!
確かに転びそうになったけど!でも転んではいないもん、あんな豪快な転け方したわけじゃないもんーーー!!
ぷんすかと怒る私に、カズさんと与っさんは思い出して笑いっぱなし。くそう、いいよもう、笑いたいだけ笑え!
その後はあくびをしまくるライオンを見たり、首を降ろして顔を覗き込んでくるキリンを見たり、終始笑いっぱなしだった。
 

が、その後外に出て、次は白熊を見に行こうとそこへ向かう道を歩いていた時、何故かピタリとカズさんが立ち止まってしまった事に首を傾げる。
カズさん?どうしたんですか?
「いや、えー・・・と・・・」
何だか冷や汗をかいて後ずさっていく。んん?何で?
どうしたんだろう、とカズさんの視線の先を見て、「あ」と気付く。道の真ん中で子供がポップコーンをばら撒いてしまい、そこに鳩がわんさかと寄ってきてそれを突っついていた。そういやカズさんて鳩苦手なんだっけ。苦手というより嫌いなのか。
んっふっふvカーズさんv
「あ、え?な、何スか・・・」
にこりと笑みを浮かべつつ、ガシリとカズさんの手を掴む。そして一気に鳩の大群の方へと走り出した。
「ちょっ、ば!待っ、ぎゃああ!!」
不意を突かれたカズさんは鳩の方へと引っ張られた事で叫び声を上げた。いやぁん、可愛いよぅ、カズさんってばv
鳩たちは走ってきた私たちに驚いてバサバサと飛び上がって逃げていった。
「なっなな何すっとやーーー!?」
あっはははは!
「はははっ!カズ、ばり凄か顔しとうぞ」
「アホか、笑っとう場合と違うわ!こっの、ほんまに何すっとや、きさんー!」
きゃーvカズさんが怒ったー♪
「あ、逃げんな!コラ、待たんか、佐倉ーーー!」
へへーん、さっき私の事笑った仕返しだもーん♪
さっきのさっきまで敬語なんか使ってたカズさんも、我を忘れて私の苗字を呼び捨ててくれちゃったりして。もう気を張らずに接してくれるようになったのがすごく嬉しい!

本当にすっごくすっごく楽しい一日になったよ!ありがとう、柊さん!(あれ、昭栄は?)まぁ昭栄にも、いちおうお礼は言ってやるか。仕方無いから。
そういえば、柊さん今回は昭栄を引き連れてってくれたんだよね。マジ感謝!何かでお礼しないとなぁ・・・。
 


 

今までで一番長いです。なんじゃこりゃ!
でももっと長く書きたかった。動物園なのに動物全然出てきてないよ!?