いつものように朝練を眺めながら歩いていると、昭栄にぐっと親指を立てられた。何をしてるんだろうと首をかしげると、今度はカズさんと目があって。
う・ま・く・いった・か……?って言ってるのかな?多分昨日のことだよね。
うーん、どうだろう……結局佐倉様からは何も連絡がなくて、ダメだったのか会えなかったのか……でもまぁとりあえず、私のするべきことはできたはず。笑って手を振って、私は教室へ急いだ。


悪ノリ★リレー!第二十五話:「おかん、キレる。」


「ひいらぎーーーーーーっ!!!」
突然の大声に、クラス中がドアを振り返った。
「お前また何ぞ余計なこつば言ったっちゃろ!!」
よっさん……何かめちゃくちゃ怒ってる?疲れきった表情で、どう見ても昨日うまくいったようには見えない。えぇえ、佐倉様には怒ってないですよってしか言ってないはずなんだけど……。
「違う、つーかなぁ、こいつ、お前の馬鹿息子どげんかせろや!!!」
「よっさん痛かです、首絞まる〜!!」
引きずられてきたのか昭栄は真っ青な顔で、怒り心頭なよっさんは昭栄をぺいっと私に放り投げた。支えきれなくてふらついた私は、昭栄にぎゅうっと抱きつかれて転ばずにすんだけど。
「うぅ〜柊、よっさんがちかっぱ怖かよぉ!たすけてぇ!!」
「お前が余計なこつするけんいかんっちゃろーが!!」
ちょっとちょっと、待ちなさい二人とも。ママン状況が全くわからないのよ。あと人目があるんだから、昭栄は離れて、よっさんはちょっと落ち着きましょうね〜。
「落ち着いとー場合じゃなか!次から次へめんどくさかこつばっかり起きるし……!」
ていうか、何で怒ってるのかちゃんと説明してくださいよ。困りきった表情の私に、よっさんは目を据わらせた。




朝練が終わると、カズさんが少しふさいだ表情をしていた。結局昨日はごたごたして、カズさんの誤解を解いていなかったことを思い出したよっさんは、部室を出ようとするカズさんを慌てて呼び止めた。
しかし、返ってきた視線はすでに潔く現実を受け止めました、と言っていて、
『ヨシ、俺に気ぃつかわんでもよかよ。あいつんこつ大事にしてやってくれれば、それでよかやけん。ばってん……悪か、しばらく一人にさせてくれ。』
そう言って去っていくカズさんには声すらかけられなかった、とか。




あぁー……あはっ、そうだった。誤解されてたことなんてすっかり忘れておりました。うまくいったかってそういう意味だったのね。うわぁー。
「うわぁーじゃねかろーが!すぐそうやって誤解生む発言すんのやめろちゃ!!朱里にもタカにも、その上カズにまで誤解されて、俺はもうどげんしたらよかかわからんぞ!!」
ふぇーんごめんなさい!よっさんに怒られたよぅと昭栄の腕にしがみつくと、昭栄が慌てたように割って入った。
「よっさん、そげん怒鳴るんはやめてください!柊がかわいそうったい!!大体っ、よっさん柊ん気持ちば知っててそげん誤解やとか言うんひどかよ!!」
え、何?
「よっさんは他に好きな人がおるかもしれんばってん、告った柊に気ぃつかわんでもよかこつにはならんです。俺は柊の味方やけん、柊ば応援しとーです!!」
「ちょ、お前何言い出すとや!?だけん違うって言っとーやろうが!!」
ざわざわっ。クラスの皆が声を潜めつつこちらを見ているのがわかる。えぇええ!?ちょっとやめてよ、変な誤解で噂を生むのは勘弁してぇええ!!
「柊、そげん隠さんでもよかよ、俺は味方やけんね。昨日も、あん怖か人がよっさんに近づこうとしとったん俺がしっかり防いだけん!」
待って完全に誤解だから!告ってないし、何一つ隠してなんかいないし、味方も何もないから!!


……っていうか、今なんつった昭栄……?
「え、だけんね、昨日部活にあん人が来とって、よっさんにベタベタしとったとよ。俺は柊んこつ応援するって決めとーし、よっさんも好きな人がおるなら誤解されたら嫌っちゃろ?だけんちゃんと追い返してやったとよ!」
胸を張る昭栄。頭を抱えるよっさん。


て、ことはさぁ。今の状況ってば、カズさんは私とよっさんが付き合ってると思ってて、昭栄は私がよっさんに叶わぬ片思いだと思ってて。
何より、佐倉様はよっさんに他に好きな人がいるって思っちゃったって、そういうこと?




何してくれてんの……?
「え……?」
空耳かときょろきょろする昭栄の胸倉を、私はあらん限りの力で締め上げた。
ねぇ、何でいっつもいっつもいーーーーっつもそうやって余計なことばっかすんの?
「ひ、柊……?」
もう邪魔しないって指切ったの誰?針千本飲むって自ら歌ってたの誰?ねぇ?
「ま、待って、なし怒っとーと?つーか笑顔はやめてっ怖かよ!!」
う・る・さ・い。ぎりぎりっと絞まる首に、昭栄が恐怖に震えだす。


ここはあえて、ママンでなく一女の子として言わせて貰うけど。
「な、なんデスカ……?」
昭栄の気持ちもわからないではないけど、だからって見過ごせない状況です。昭栄が余計なことさえ言わなければ、一人の乙女の心は傷つかずにすんでいたはずなんだもの。すぅっと息を吸って、にっこり、笑って言った。


昭栄、あんた相当ウザいよ。存在が。


固まってしまった昭栄を解放して、私は冷や汗を浮かべているよっさんに向き直った。少し後退さるよっさんの腕を、にっこり笑顔のままがしっと掴んだ。
よっさん、もういいから告ってこいよ(キラキラ)
「な、は……!?」
誤解とくのに説明して回るのめんどくさい。どうせ言っただけじゃ信じないし。特にカズさんなんて単純で誤解しやすい割に頑固なんだから。
「だ、ちょぉ待て」
告れ。そしてさっさとくっつけ。それが一番てっとり早く解決する方法だから。
「お前自分がめんどくさかだけっちゃろ!?」
そうだよ悪い?
開き直った私によっさんは口をパクパクさせて、何か言いたげな顔をしているけど。そもそもこんなとこで私に怒ってる暇があったら、さっさと佐倉様のとこに行けばいいんじゃないの?
ごめん、おかんもう限界やわ。めんどい。
「おかん!?ちゅーか、めんどくさくしとーんはお前がいらんこつ言うけんじゃなかか!?」
ぷち。


あ゛ーっうだうだ言っとらんと、はよ行ってこんかぁああああ!!!!




おかんは、さじを 投げた!
さくらに、丸投げを した!
焦らすも進むも佐倉様の自由です(笑)がんばれー!!(笑)