柊さんこと『おかん』のとっても厳しい丸投げっぷりに、佐倉ねーさんも大混乱。
ええええ、どうすりゃいいのー?(キョトーン)

 
悪ノリ★リレー!第二十六話:
「相談に乗ってほしいのは私の方なんですけどね」

 
ピンポーンというチャイムの音が聞こえたが、布団に包まったまま無視をした。
今、朱里ちゃんはね、反省中なんです傷心中なんです。帰れ帰れ。
人肌でもっふりと暖かい布団の中で、ふんっと鼻を鳴らす。しかし訪問者は諦めずにピンポンピンポンとチャイムを鳴らし続け、ドアをドンドンと叩いてきたりしてうるさいことこの上ない。
えーもう帰ってよ今私は外に出たくないんだよ、かーえーれー。
それでもやっぱり訪問者は帰らない。そのしつこさにのそりと起き上がり、ぼさぼさの髪の毛のまま部屋を出て玄関のドアから外に誰が居るのかを覗った。セールスだったら怒鳴りつけて追い返してやる!
けれど、そこに居たのは思いもしない人物で。そのせいでガチャリと鍵を開けてしまった。
 

「何か用か、天敵。つーか何で私の家を知ってんのよ」
少しだけ開けたドアの隙間からジロリと訪問者を睨みつける。それに「ひっ!?」と怯える声を発したが、すぐにキッと私の方を見据えてきた。その真剣さを称えた目に首を傾げる。どうしたんだ、コイツ??
「話ばあっとですたい!ここ開けてくだっさい!」
「・・・私にはアンタと話すような事なんか無いわよ。帰れ帰れ!つーか部活あんだろうが、まだ部活終わってない時間でしょー!」
昨日アンタが私を追い返そうとしたくせに話があるだとう?何の話をしようってんだ、与っさんに纏わりつくなと念を押しにきたのか?くそう、んなもんわかってら!改めてんな事話されても聞きたくないっつのーーー!
ムカムカと怒りが込み上げて、ドアをさっさと閉めてしまおうと取っ手を引くと、私の天敵、今はドアの向こう側に居る昭栄は、隙間に手を入れてぐぐぐぐっと押し開こうとしてきた。
「ぎゃああ無理矢理開けようとすんなー!入ってくんな、帰れっつってんじゃんーー!」
「話ばあるって言うとうっちゃろーー!」
「私には無いっつってんだろーー!」
「俺にはあるったい!」
「私には無い!」
何だコイツ!更に追い討ちをかけられるような言葉はもう聞きたくないんだってば、うああん!
必死にドアを閉めようとするも、女の私が力で昭栄に勝てる筈もなく、強引にドアを開けられてしまう。思い込んだら一直線な昭栄は話をするまで帰りはしないだろう。ああもう、だったら勝手に話してろ、私は寝る!!不貞寝する!
ドアを閉めるのは諦めて、ぷいっとそこから踵を返してドスドスと足音も荒く自分の部屋へと戻った。その後を、昭栄はちゃんと「お邪魔します」と挨拶をしてから追ってきた。
 

ボスンとベッドに寝転び、昭栄からの言葉が聞こえないように両手で耳を塞いで頭から布団を被る。けれど、塞いでいてもかすかに耳に音が聞こえてくる。ストンとベッドの傍に座り込んだんだろう、昭栄の衣擦れの音に、ぎゅっと目を瞑った。
「あの・・・すんませんでした」
唐突な謝罪の言葉に、瞑った目をパチリと開く。は?何でいきなり謝ってんの?
「アンタに、佐倉さんに酷かこつばっか言うとったん解ってはおったばってん、俺・・・まともに話もしたこつなかアンタより、柊とカズさんとそれに与っさんが大事やけん、守ろうと思っちょって・・・」
何だか声に元気が無い。いつも私に突っ掛かってくるときの勢いなんか欠片もないってくらいに。何なのどうしたのよ、昭栄が殊勝な態度だと気持ち悪いんですケド!?
でもまぁ、わからないでもない。心根の優しい子なんだってのは今まで柊さんから話を聞いてて知ってる。だって柊さんの親友なんだもん、それは最初から解ってる。ただ必死に、自分なりに、大事な人を純粋に守ろうとしていただけ、なんだって。うん、解ってはいるよ、だけどさ・・・初っ端から先入観で私を排除しようとしてたのは事実であって、そこは私も傷ついたりなんかしたわけで。でもちょーっと謝り方に酷い言葉も入ってるよね。「アンタは所詮他人で俺ん中では大事でも何でもない人なんだ」みたいな。あ、ちょっとムカつく。
「だけん、先に謝ろと思うて・・・すんませんでした」
素直に謝罪をする昭栄に、何だか力が抜けてしまった。ここで意地を張っても私自身が虚しくなっちゃうじゃない。
「・・・いーよ、別に。私もアンタに酷い事言ってたし、お互い様でしょ、そこは」
「じゃ、じゃあ許してくれっと!?」
少し喜びを浮き立たせた昭栄に、布団からもそりと顔だけ出して、コクリと頷いた。
「じゃあじゃあ相談ば乗って!」
「は?」
何だソレ。相談??
これまた唐突な話の転換に頭が追いつかずに首を傾げると、何やら思い出したのか、昭栄はボロボロと涙を零して「うぇっうぇっ」と泣きべそをかき始めてしまった。
「ちょ、しょしょ昭栄!?何で泣いてんのーー!?」
ガバリと起き上がっておろおろする。と、とりあえず泣かずに説明してよ、ワケ解らーーん!
ベッド脇に置いてあるティッシュの箱を取って2、3枚取り出し、ぐずぐずと鼻を啜って泣く昭栄へと押し付ける。ぶいーんと鼻をかんだ昭栄は、涙声のままようやく話し始めた。
まぁ、うん・・・私の聞きたくなかった話じゃなかったようで少し安心したよ。ハァ・・・
 

「そんでね、柊が・・・うぇっく、柊が・・・柊、俺んこつウザイって、俺の存在がウザイって・・・っうああああ、酷かーーー!ばりショックったいーーー!」
話しながら思い出してしまって更に泣く昭栄にちょっと呆れる。うん、ごめん、私も今話を聞きながら同じ事思っちゃった。ウザイよ、昭栄・・・。つーか話が要領を得なくてわからないんですけど?とにかく柊さんに怒られて凄まれた事が酷くショックだったって事だけは解った。
ショックを受けてるのは私もなんですけどね〜、昨日与っさんに好きな人が居たって知って、それを話してもらえなくて。おまけに自分が勝手に友達だと思ってたけど与っさんはそうじゃなかったんだと知って。私も傷心中なんだよ。私の方こそ相談に乗ってほしいくらいだ。
「だけん、今度こそ柊、俺んこつ許してくれそうもなかやけん、どげんしたらよかと〜〜」
どこをどうして柊さんに怒られたのか今いち解りづらい昭栄の話を適当に聞き流していたため、そんな事を聞かれても解決策など見えてこない。無理。もう1回説明しろと言いたいところだが、昭栄じゃまた同じような要領の得ない説明になるだろう事が容易に解って匙を投げたくなる。
「あ〜・・・許してもらえるまで謝るしかないんじゃない?」
「ばってん、こん前ん時も謝り倒しても柊許してくれんかったとよ!だけん、アンタに貰うたチケットで遊園地ば行ってようやく許してもらえたんに・・・次はどげんすればよかとよーー!」
あー、柊さんも頑固だからねぇ、カズさんに似て。そういうところそっくりだよね、あの2人。なんて考えながら、ぼけーっと天井を見上げて、昭栄の泣く声を右から左へと流していく。落ち込んでいる時に人から相談を受けてもまともに聞く気なんか無くて、それよりも気になっている事を昭栄に聞いた。
「ねー・・・与っさんの好きな人って誰?」
「へあ?えーっと・・・?俺も知らんったい。誰なんちゃろ??」
「同じ学校の子なんかなぁ?」
「さぁ・・・。あ、柊に聞けば解るかも?・・・うああん、柊〜〜!なしあげに怒ってしもうたとーー!」
げ、また思い出し泣きに戻っちゃった。うーん、先に柊さんと昭栄を仲直りさせなきゃ私も昭栄も前に進めないかぁ。本当に誰なんだろう、与っさんの好きな人って。与っさんから話を聞いてた限りでは、話題に上るのはいつもカズさんの事とかサッカー部の事とかそんなものばかりで、女の子の話なんか一切無かった。
・・・・・・当たり前か、友達でもない付き纏ってるくるだけの奴には適当な上っ面の話しかしないよね。うぁ、また落ち込んできた。
どんよりと、昭栄と2人で暗雲を背負ってべっこり凹む。抜け出したいのに抜け出せないループに途方に暮れる。と、ピンポーンとまたもチャイムが訪問者が来た事を知らせてきた。
「あ、誰か来たみたいっちゃね」
「みたいねー。まぁ、いいや。放っとこ。今セールスなんか追い払う気力ないもん」
「え、よかなん?」
「んー、よかよかー。・・・って、そういや昭栄、アンタ玄関の鍵かけた?」
「へ?かけてなかよ」
キョトンと目を丸くして言う昭栄にガックリと肩を落とす。じゃあ出なきゃなんないじゃん、ちぇ。鍵くらいかけてきてよー、と八つ当たり気味にジトリと昭栄を睨みつつ、部屋を出て玄関に向かう。

はいはい、どなたですかー?
「あー・・・えっと、俺、やけど」
・・・・・・・・・・・は?
かったるいと言わんばかりの声で問いかけて返ってきた声に、ピシリと固まる。え、ええ!?よよよ与っさん!?ななななななーー!?何で!?
まさか与っさんが家に来るとは思ってもいなくて、慌ててドアを開けようとしてピタリと止まる。私、すんごいぼっさぼさな頭のままなんですけど。昭栄ならどうでもいいからいざ知らず、こんな状態で与っさんの前に出るとかできるわけないじゃん!!わーわーどうしようーー!?
わたわたと慌てていちおう手櫛で四方八方に飛び跳ねる髪の毛を直そうと試みるが、くせの強い髪質はそう簡単には直らない。
「朱里?」
うあああのあの、ちょちょちょっと待って!
「いや、ちょい話ばあるだけやけん、出てこれんか?」
そう言って、コンと玄関のドアを叩かれて「開けろ」と促される。開けれるわけないじゃんばかーー!どうすんのどうすんの、朱里ちゃんピーンチ!
慌てている間にも、なかなかドアを開けない私に焦れたのか、ドアの取っ手がガチャリと回る。
げ!?
「おい、朱里。開けるぞ」
うあああ待ってってばーー!!
止めようとするも、呆気なくドアは開かれてしまう。ぎゃあああ変な頭見られたーーー!!
頭を抑えて蹲ると、訝しげな声色で名前を呼ばれた。
「朱里、お前そん頭どげんした?寝ちょったんか?」
寝てたのバーレバーレですやーん☆ええ、寝てましたよ、昭栄が来るまで学校サボって寝てましたよー!
心の中でめそめそとしばらく泣いて黙り込んでいたが、与っさんまでもが黙り込んでじっと一点を見つめている事に気付いてそろりと目を与っさんの視線の先へと向けた。・・・見てるの、靴?靴がどうかしたのかな。
与っさん・・・?どうし、
「こん靴、誰のや?」
へ?
「お前んとこ、兄弟ば妹だけやったよな。こん靴でかいし、どー見ても男モンやけん、親父さんのにしたってこげな学生が履くような靴なわけなかやし・・・誰か男、来とんか?」
え、えーと、ま、まぁ・・・うん。
曖昧な答えでコクリと頷く。『昭栄が来てます』なんて言っちゃっていいのかな。いやでもさっき昭栄が「与っさんもばり怒っとって怖かやったー」とか泣いてたし、部活もサボってきちゃったみたいだし、昭栄がうちに居るなんて知ったらまた怒ったりする、かな?
言うべきか言わざるべきかとうーんと考え込んでいると、何だかぞくりと背筋が粟立った。なななんか寒い!?空気が寒いよ!?
与っさんの方を見やれば、思いっきり眉間に皺を刻んでいた。え、えええ、何か怒ってるー!?
「誰じゃ」
え、え?誰、って・・・
「俺の知っとう奴か?6年の時仲ば良かやった村田か、星野か」
ちょ、え、よよ与っさん??何言ってんの、違うって!
「じゃあ誰じゃ。今、来とんの男なんちゃろ」
そ、そうだけど・・・
肯定の言葉を出せば、与っさんは更に眉間に深い皺を寄せた。うああん、何でこんな怖い顔してんのーー!?
「・・・邪魔したな。帰る」
へ、ええ!?よ、与っさぁーーーん!?
スタスタと足早に去って行ってしまった与っさんを止めるヒマもなく、呆然と見送った。
 

あ、あの・・・何?何で??与っさんは一体何をしに来たの??
ああもう、何が何だかわからなーーーい!!
 





佐倉は 逃げの一手の呪文をとなえた
柊さんに 『丸投げ返し』を つかった(てろりろりーん)(柊さんのぼうぎょりょくがさがった)

展開を逃げました。逃げ出しました。更に混乱を招き与っさんが可哀相な方向で(えー)
ここで与っさんが告りに来たら防ぎようがなかったんだもん!(だって私即OKしちゃうしー)(待て)柊さんもカズさんの誤解を解くべく頑張ってくださいましー!(笑)毎度変な切り方と展開で本当すいませ・・・っ!!