あんまりめんどくさい状況につい突き放すようなことを言ったけど、よっさんもかわいそうだよなぁ。カズさんが誤解したのは完全に私のせいだし。
……うん、カズさんの方は私が責任を取るべきだよね。


悪ノリ★リレー!第二十七話:「災い転じて……?」


昼休み。朝練に放課後の部活にと忙しいサッカー部の主力・カズさんを捕まえるにはここしかチャンスはないわけで。
ふと見た窓の外、ぽかぽか陽気の中をのんびり歩く見慣れた姿に、私は教室を駆け出した。


か、カズさ、……って、くださいっ!
「!?な、柊か!びっくりするっちゃろーが!!」
突然腕を掴んだことを叱られても、ぜぇぜぇと酸素を取り込むのに必死な私はそれどころじゃなく。
「なん、こら離せ」
勘弁してください、今支えを失ったら倒れて死んでしまう……(ぜぇぜぇ)
「俺は杖か!ったく……体力なかなぁお前は。」
そうですよ体力ないんですよ。三階の教室から中庭まで全力疾走なんて、普段の私じゃ考えられないことですよ。疲れるとか汗かくとか、好きじゃないし。
ようやく息が整って、それまでカズさんが何も言わずにそのままでいてくれたことが嬉しくて。私はえへへっと笑って顔を上げた。
疲れたけど、でもいいです。カズさんに追いつけたし!
「……もっと体力つけんやアホ。って……何やこの爪!」
私の指先を見つめて、カズさんがぎょっと声を上げた。赤と黒のマニキュアが塗られた私の爪は、本来の長さとあいまってかなりの迫力を醸し出している。
いやー、防御力を下げられちゃったんで、せめて攻撃力を上げていこうと思って。有事に備えて、と言いますか?
「はぁ……?」
カズさんは首をかしげているけど、そんなことを説明している場合じゃないんだよね。


どうやったらカズさんの誤解を解けるか、考えたんだけど。闇雲に「違います誤解です」を繰り返してもあまり効果はなさそうな気がするんだよね。
だから、よっさんには悪いけど、事の次第を全部話しちゃおうと思うんですよ。それなら私がよっさんに告ったわけでもなく、付き合ってるわけでもなく、って全部わかってもらえると思うんだよね。
それに、多分カズさんなら協力するって言ってくれそうだし。よっさんにとって悪いことってないんじゃないかな?うん、絶対そうだよ!!


心の中で整理をして、いぶかしげなカズさんを見上げる。
あのですね、聞いてもらいたいことがあるんです。ちょっと長くなるんですけど、結論から言うと、私とよっさんは付き合ってないです!ってことなんです。
「は……?ばってんお前、昨日」
それは!あのー、話を聞いてもらえばわかると思うんですけど、私カズさんがそういう誤解してるって忘れてて、違う意味にとっちゃって。とにかく、誤解なんです!
カズさんの猫みたいな目を見つめて、一生懸命訴えた。とにかく話を聞いてもらわなきゃ、一歩も先に進まないんだから。
粘る私に根負けしたのか、カズさんがふぅっと息をつく。困った笑顔で、口を開いて……


「柊、ちょお聞け!!あか……っカ、ズ?」
カズさんの笑顔がぴきんと凍った。何で邪魔すんだよお前はぁああああ!!!!


「……何やヨシ、こいつに話あると?」
「あ、いや、まぁ……ちょお借りてもよかか?」
よくないです全然よくないですっ!!ていうかよっさんの話なんてどうせここでもできることでしょ、何で移動しなきゃなんないんですかぁ!!
「アホ、何言っとーと、できんに決まっとろーが!カズは朱里の……っと」
佐倉様???
「佐倉がどげんした?」
「……あー、いや何でもなか。忘れてくれ。ちゅーか、何やその爪は!?」
私の爪を見てぎょっとするよっさんに、私はハハハーと乾いた笑いを返した。そんなに驚くようなことかなー、可愛いと思うんだけど。
爪を見て首をかしげていると、今度は担任が走ってきた。
「柊、こげんとこにおったんか!昼休み職員室に来いって言ったろーが!」
げっ、忘れてた……。さっと目をそらした私に、カズさんがおいおいという視線をよこす。だってどうせお説教でしょ、そんなことよりカズさんの方が大事だもん!
「お前な、最近化粧はする、派手なアクセサリーはつけとる、おまけにこの爪。お説教ですむならよか方やぞ?他の先生方に目ぇつけられたらどげんすっと?」
担任はまだ若い先生だから、きっと学年主任とかに嫌味とか言われるんだろうなー……でもさ、私の爪が何色だって誰にも迷惑かかんないよね?
「近所の方々が、こん学校はどげん教育しとーかって思うとよ。十分迷惑かかっとーやろうが。」
うぅ……何だよー、可愛いのに。皆頭固いんだからー……。ぶぅっとふくれると、担任は困ったように眉を下げた。
「そん気持ちはよぅわかるばってん、合わせとかんとお前が不利になるかもしれんけんな。おしゃれは休日に楽しもうな?」
はぁ〜い。あんまり先生に心労をかけるのも悪いので、渋々うなずいた。まぁこれで職員室には行かなくてすむし!後はカズさんとお話するだけ……
「先生、安心しとってください。俺が今からよぅ言ってきかせときますけん。」
はっ!?
「あぁ、それは助かると。城光と知り合いやったんか、そんなら任せるけん。」
「はい、任せてください。そんならこれで」
頼もしくうなずいて、よっさんは私の腕をがしっと掴んだ。そのまま引きずられそうな勢いに、焦って思わずカズさんにしがみつく。
「え!?うわっ、ちょ」
いやぁあカズさん助けてくださいぃい!!!
「変な声出すな!!いーから黙ってついて来んや!!」
べりっと引き剥がされて、ズルズルと連れられていく。何でなの、嫌だって言ってんじゃんかー!!尚もカズさんに助けを求めようと振り返った先、物陰に見えたものに私は目を丸くした。
もっさい眼鏡、茶髪の毛先、縦長い体。私と目が合ってびくっと震えたのは、どう考えても……。私の視線に振り向いたカズさんにも同じものが見えたのだろう、一瞬驚きにその背中が硬直して。


「ごらぁショーエイ〜〜〜〜〜!!!!お前昨日も今朝もサボりやがって、何のつもりじゃこんボケがぁああああ!!!!」
「ぎゃーっカズさんすんません勘弁してくださいぃいいい!!!」



頼みの綱のカズさんは、逃げ出した昭栄を追いかけて行ってしまいました。あぁあもう、何なの、何でこんなに邪魔が入るんだよー……。




ズルズルと引きずられるまま花壇のそばの日陰に入ると、ようやく解放される。人気がないか辺りを気にしているようだけど、私は構わずよっさんをにらみつけた。
「無理矢理悪かやったな。爪んこつはどうでもよか、ちょお話あって」
私もカズさんに話があったんですけど。せっかく誤解解けそうだったのに、何で邪魔するんですかっ!
「え……そ、そうだったんか?」
そうだよこのままじゃよっさんがかわいそうだなって思って、全力疾走までしたのに意味ないじゃん。最悪だよもー!!
「わ、悪か……ばってん聞きたかこつがあるけん。あんな、朱里の」
もーっ知らないってば!佐倉様の方はさっさと告ってくっつけっつったじゃん!!
こっちの事情は全然聞いてくれないくせに、何で私はよっさんの話を聞いてあげなきゃいけないわけ?理不尽じゃんか!ぶすっとむくれる私に、よっさんはぼそっとつぶやいた。
「くっつこーにも、朱里に男がおったらどげんしようもなかやろ?」
…………へっ?
思わぬ言葉に、怒りも忘れて顔を上げてしまった。ぽけっとしていると、よっさんが困ったように腕を組む。
「お前も何も聞いてなかか?好きな奴がおるとか、誰かに告られたとか……」
全く聞いたこともない。ぶんぶん首を振ると、はぁっとため息。
「昨日家に行ったら、玄関に男もんの靴があったとよ。なかなか開けようとせんし、しどろもどろになっとーし、男か?って聞いたらそうやって。」
えぇえ!?でもでも、そんな話一言も……佐倉様のメールで出る男子の名前なんて、カズさんかよっさんか、たまーに昭栄ってくらいで……あとは担任の先生とか、明らかに範囲外の人しか聞いたことないけど……。
「ただの友達やったらそげん慌てたりせんっちゃろ?」
うーん……まぁ、多分……。でも、何か他に事情があったのかもしれないし!
「何かって?」
そんなこと私に聞かれても、知らないよぅ……;何ていうのかな、意外とよっさんって悩み始めると進めなくなるタイプ?もっと皆のお父さんな人かと思ってたけど、やっぱり息子に感じてしまうわ……。
ここはママンが背中を押すしかないようね。ふぅとため息をついて、どう言うべきか考えようと視線を巡らせていると、


「城光君、ちょおよか?柊さんにお話があるっちゃけど。」


すぐそばに、いつの間にか三年生らしき三人のお姉さま方が立っていた。何やらにこにこと微笑んでいらっしゃる。……とっても美人さんなのですが、心なしか寒気を覚えるのは、私だけでしょうか……?
うーわー……え、これってまさかの?ほんと今日はついてないわ……;
「そう、なんか?ばってんお前ら知り合いと違うっちゃろ。」
妙な空気を感じ取ってくれたのか、よっさんが少し眉根を寄せた。けれど、そんなことで黙る方々ではありません。
「今日の昼休み、約束しとったの。私たちの方が先約やけん、よかでしょ?」
おぉ、なかなかのゴリ押し具合。約束っていつしたっけ?
でも、いい機会かも……色々と校内を駆け巡っているらしい噂を消すには、こういう類の人たちに「全部嘘だって」とふれ回ってもらうのが一番早い。
「ばってん、もう話しとー時間なかぞ。」
タイミングよく、チャイムが鳴る。ほっとした表情のよっさんには悪いけど、この申し出は受けて立つことに決めました!
それじゃあ先輩方、放課後にお話、お聞きしますね。にこっと笑ってそう言うと、よっさんがぎょっと目を見開いたのがわかった。
心配は嬉しいけど、物は使いようって言うじゃない?散々邪魔され続けたけど、これで一歩踏み出せるかも。


ママンはね、売られたケンカは買うし、転んでもただじゃ起きない主義なのヨ★


うわー……続き書きにくいかんじでごめんなさい;佐倉様のセンスにお任せ!(こら)
企画だと普段書いてる与と性格が変わってしまいます……。