校舎裏、中庭、倉庫……人の来ない場所は大抵見てまわった。それでもまだ見つからない後輩の姿に、嫌な汗がにじんでくる。
あと見ていないのは、校舎内くらいか。走り出そうとすると、ちょうど角でカズと鉢合わせた。
「ヨシ!お前どこ行っとったと?キャプテンがそげん何日も抜けるとか、俺もさすがに言い訳できんぞ。」
「それどころじゃなか!カズ、お前も探せ!」
「は?探すって?」
まだ事情を話していなかったことを思い出して、俺は慌てて昼の出来事を話し始めた。


「なん、それ……ヨシ!!お前がついとってなしそげんこつになっとーや!?」
「悪かっ……やけん俺もずっと探して。ばってん見つからん」
胸倉を掴むカズの手が震えている。どんっと突き放すように解放されて、カズは俺に背中を向けた。
「ヨシ、お前は部活に行け。あいつは俺が見つける!」
駆け出した姿は、すぐに校舎内に消えていった。




悪ノリ★リレー!第二十九話:「決戦!カモン体育館裏」


って、あんまりベタすぎてどうよこれ。というわけで呼び出しの紙in下駄箱に前代未聞のお返事を書きました。
『場所は屋上にしましょう。ぶっちゃけこの校舎、構造から言って体育館裏はサッカー部の部室のそばですから、落ち着かないと思います。それでは、屋上でお待ちしています。』
うん、完璧★


「あんた何様のつもりなん!?バリ生意気!!ムカつく!!」
「こげん馬鹿にした手紙わざわざ下駄箱に入れ返すとか、ありえん!!」
現れたお姉さま方はものすごい形相で怒っていらっしゃいます。な、何で?私は一応この方々(おそらくカズさんかよっさんのファン)に配慮したつもりだったんだけど;
「前から思ってたっちゃけど、あんた好き勝手やりすぎったい!」
「高山君に近づいて功刀君にベタベタしたり!」
「今度は城光君にまで色目使って!!」
いやいやー、色目は使ってないでしょう。ていうか何年代のセンスですかそのセリフ。
思わず出た言葉に慌てて自分で口を覆う。しまった、ついくせで余計なことを……!
「……っ生意気ー!!後輩のくせに偉そうに!!」
あは、すいません口が滑って、じゃなくて、えーと。とりあえず落ち着いて話しません?
「自分が悪いっちゃろ!!そーいう生意気なとこがムカつくって言っとーと!!」
いやー気持ちはよくわかるんですけど、こういう性格なんで……
「馬鹿にして、ちょぉ黙らんね!!」
どんっと肩を押されて、壁にすがるようによろよろと後ずさる。えぇえ、ちょっと何これ、完璧に怒らせた?
「もう二度とあの三人の周りばウロウロせんで。」
「優しかやけんって、弄ぶげなこつ、うちらが許さんけん!」
待ってください、私弄ぶとかしてないですから!友達で仲がいいってだけで誰とも……
「そげんこつ信じられるわけなかでしょ!黙ってうなずかんね!!」
そ、そんなこと言われたって……昭栄は親友だしカズさんやよっさんは大好きで憧れの先輩で、もう二度と話さないとか考えられない。そんなの寂しいもん。


むぅっと口を引き結んだ私に、先輩方の目がつり上がる。悪意や敵意がダイレクトに伝わってきて、正直かなり怖いけど、これだけは譲れない。
私は誰とも付き合ってないし、三人を弄んだこともないし、なのにどうしてそんなこと言われなきゃいけないんですか?私にはうなずく理由がありません。
「なっ……」
私がカズさんたちと仲良く話してるのがそんなに羨ましいなら、皆さんも話しかければいいじゃないですか。仰った通り、三人とも優しいから、きっと友達になってくれますよ?
「………………っ!!」
振り上げられた手。暴力なんかに屈してたまるか、とは思うものの、反射的にぎゅっと目を瞑る。
「お前らっ柊に何しとーと!?」
屋上のドアが開く大きな音がして、大きな声が先輩の動きを止めた。


「高山君……!」
「柊大丈夫や!?怪我は!?」
駆け寄って来た昭栄の心配そうな眼差しに、ふるふると首を振った。誰にも言ってなかったのに、何で昭栄がここに……?
「俺が来たけんもう安心やけんね。柊ばイジめる奴は俺が許さん!」
そう言って、昭栄が私と先輩方の間に立つ。
「高山君、なしそん子ば庇うと!?高山君、散々利用されて、挙句の果てにはウザいとか言われとったのに」
「そげんひどか子に優しくするこつなかよ!」
そう、利用した云々はともかく、怒りに任せて「存在がウザい」とか言い放ったのは確かに私です……。あれ以来喋ってなかったし、謝ってもいないのに。


「……そげんこつ関係なかよ。柊はいっつも俺に優しくしてくれるけん、俺も柊に優しくしてあげたか。柊が俺んこつ嫌いになっても、俺は柊んこつ大事に思っとー。」


真面目な声で言う昭栄に、私も先輩方も、一瞬言葉を失った。
「う、うちらはっ!ただ高山君こつ思って……!」
「そんなら、柊と仲良くしてください。変な噂ば信じて怒るんじゃなくて。そん方が俺は嬉しかです。」
しばらくの沈黙の後、先輩方は屋上を去っていった。昭栄の背中越しにちらっと見えた涙目が良心をえぐる。もしかして昭栄のファンだったのかも。悪いことしちゃったなぁ……。
「柊?どげんしたと、大丈夫?」
急に力が抜けてぺたんと座り込んだ私に、振り向いた昭栄が目を丸くした。いやいや、別に大丈夫だよ。何があったわけでもないし、ちょっと気が抜けただけで。
うーん、と首を捻って、昭栄も私に向かい合うように座った。
「ばってん、怖かったでしょ?もう大丈夫やけんね。」
よしよしと頭をなでられて、大きな手だなぁなんて思ったら、何だかものすごく安心した。


昭栄、来てくれてありがとね?
「んーん、よかよ。気付くの遅くてごめんな。」
あとね、ウザいとか言ってごめんね……ちょっとイライラしてて、言いすぎた。さっきの先輩たちが怒ってたのもね、私が昭栄にひどいこと言ったからだったんだよ。怒ったりしないでね?
「うん……わかった。柊は?もう俺んこつ怒ってなか?」
きゅっと手を握って首をかしげる昭栄は子犬みたいで、さっきまですごくかっこよかったのに、今は何だか可愛い。甘えん坊の息子みたいな、いつもの昭栄だ。
「仲直りする?」
うん、する……昭栄大好き。そう言って握り返したら、昭栄は嬉しそうに笑ってくれた。
「えへへ……俺も、柊んこつ大す」
ゲシッ!!!!


……………………………って、わぁあ昭栄!!大丈夫!?
「大丈夫やろ、そいつ不死身やけん。」
カズさん!?何でそんなふんぞり返って、いつからいたんですか、っていうか昭栄!!しっかりして!!
蹴り飛ばされて倒れたままの昭栄を揺さぶると、相当痛かったらしく涙目でむぎゅっと抱きついてくる。うえぇんと肩口に顔を埋める昭栄に、かわいそうになってよしよしと頭をなでた。
カズさん、何もしてないのにいきなり蹴るのはひどいですよ!昭栄だって人間なんだから、油断してたら痛いですよ!!
「いや普段も痛くないわけじゃなかよ?」
え、そうなの?
「そうっちゃよー!柊までひどかぁ」
昭栄がぷくっとふくれて見上げてくる。やだぁかーわいい、けど顔近っ!!
「……かげんに、せろっ!!!
「どわっカズさん!?」
ドーンっと押されて、昭栄の体が離れる。その隙に、カズさんが私の腕をがしっと掴んだ。ぽかんとする私と昭栄を無視して、カズさんはずんずんと歩き出す。
カズさんカズさん、手!ものすごく引っ張られてるんですけども!?
「柊、今日は特別に練習近くで見せてやるけん。」
へっ何で!?ちょ、カズさん昭栄は……
「いーからはよ行くぞ!!」
ぐいぐいと引きずられるまま、私はその日、なぜか問答無用でカズさんの鬼GKっぷりを眺めさせていただきました。




あれだね、近くで見ると、すごい迫力なんだね……。




しょえいとひーらぎのなんちゃってバカッポー編でした(笑)しょえ、かっこよくなったのでしょうか……???