急いで学校に戻ったらば、クラスの友人にえっらい叱られました。うえぇん、そんな怒らなくたっていいじゃんかーー!

 
悪ノリ★リレー!第三十話:「あゝ、無情」

 
文化祭の準備ったってさ、別にそんなにやる事もないんじゃないの?とか思ってたけど、「悠長な事言ってんじゃない!」と言われてしまった。え、何、そんなに大掛かりな準備が必要なものやるの?えー、と?何やるんだっけ、うちのクラスって?
「ちょっと、朱里。アンタまたちゃんと聞いとらんかったと!?HRで決めたっちゃろー!」
ごごごめん!今日ばずっと考え事しとって聞いてませんでしたー!
正直に謝ったのに、こめかみにピキリと青筋を立てた友人から雷が落とされてしまった。ぎゃんぎゃんと怒鳴る声に両手で耳を塞いでしまいたかったが、そんな事をしてしまえば余計に怒られる事がわかっているため、じっと我慢して怒られておく事にした。うん、はい、私が悪いんです、何にも聞いてなかったんだから。
「いーい?うちのクラスは喫茶店!で、女子はその衣装を作らないけんし忙しかなんよ、わかった!?」
わ、わかりました・・・;
でも私、裁縫は苦手なんだよなぁ。縫ってると自分の着てる服も一緒に縫い込んじゃったり、指を突き刺すのは当たり前のようにやっちゃうし、ミシンも上手く使えないし。ミシンってさ、便利だけど私がやると真っ直ぐじゃなく斜めに縫っちゃったりするんだよね。あ〜あ、ヤダなぁ。
ポツリとそんな愚痴を零したら、地獄耳な友人はそれを聞き取ったらしく、ぐりんと振り向いてジロっと睨んできた。うあああ!ごめん、やります、ちゃんとやりますーー!!
「んじゃ、はいこれ。アンタの作る分ね」
へ?あの〜・・・?こんな、に?
「こんなに、ってクラス全員の分なんやけん、量が多いんは当たり前でしょ」
いや、それはそうなんだけど、でもこれってさ、私一人でクラスの半分くらいの量になってない?
「サボった罰よ」
ええええ!?酷いーー!
「うっさい!他の子は違う準備に追われとうけん、文句言うな!」
だってだって多すぎー!私裁縫苦手なのにこんなに作れんわーー!
「やっかましいーー!ごちゃごちゃ我が侭言うとらんとさっさとやらんねーー!」
はっはいぃいーーー!!
うっうっ、ちょっと忘れちゃってただけなのに、文化祭なんてまだ先なのに、そんなに焦らなくてもいいじゃん怒らなくてもいいじゃん、酷いや酷いや。
しかし怒れる友人に逆らえるはずもなく、泣きべそをかきながら、渡された布地で衣装を作る事になった。

でもさ、ちょっとよろしいですかね、そこの怒ってるお嬢さん。この衣装、まともなウェイトレスなものもあるけど、何だかすっごくイロモノ系な気がするのは私だけでしょうか?
そう聞きたいけれど、何だかピリピリしちゃってるから聞くに聞けない。あ〜あ、文化祭実行委員なんか引き受けるからそうなるんだよー。言うと怒られるから言いませんけどね、これ以上怒られるの嫌だし、何よりマジに実行委員の仕事を押し付けてやるとか言われちゃ堪りません。言われたとおりにやりますよーだ、なんて心の中でぶちぶちと文句を零しながら、型紙に合わせて布地をカットしていく。
でも本当にこんな時に限って文化祭があるなんて、タイミング悪すぎだよ。せっかく与っさんの学校まで行って潜入捜査してたのに、結局見つけられないままこっちに呼び出されちゃったし、あ〜あ・・・
「こら、朱里!手を休めてる暇なかとよ!」
わかってるよぅ、何でそんなに怒ってんのー!?
「怒っとうわけじゃないわよ、気合い入ってんの!」
は?気合い?
コテンと首を傾げて聞いてみれば、出展の人気投票で1位になったクラスは一ヶ月分の食堂の食券が貰えるんだとか。しかもクラス全員に。
はっはー、そりゃ太っ腹だ。気合いも入るわけだ。教室内をぐるりと見渡しても、クラス全員が居て張り切っている様がありありとしていた。だから私も呼び戻されたわけね、納得。私だって欲しいや、食券一か月分!そうと聞いたら張り切っちゃうよ、私も!
ざかざかと布地を切って切って切りまくる。が、さすがにクラスの半分の人数分ともなるとやっぱり量が半端じゃない。しかも、同じ衣装じゃなくて違うものも数種あったりするのだ。
うぇえ、これ文化祭までに本当に作れるのかな。ただでさえ私裁縫苦手なのにどうすんのー!?

そんなこんなで、作業が一段落もしないまま外はどっぷりと暗くなってしまい、帰る頃には疲れ果ててヨロリラと足元が覚束無い状態で帰宅した。
うう・・・こんなのがしばらく続くのか・・・これじゃ与っさんの好きな人探しどころじゃないや。すんごい気になるのにな。ちぇっちぇっ。
こうなったらカズさんの報告を待つしかないか、とハァ〜と溜息を吐いた。くそ、これというのも与っさんが私に内緒になんかしてるからだ!なーんで教えてくんないかなぁ!
ムキー!と道路の真ん中で憤っていると、ポケットの中で携帯がブブブと動いて、ビックゥと驚く。なな何だ、誰だよ、もう!
八つ当たりのように携帯に怒りを向けてパクンと開くと、ディスプレイには今考えていた人物の名前が表示されていた。
え、与っさん・・・?何だろ、ま、ままままさかカズさん、今日私がそっちの学校行った事言っちゃったりしてないでしょうね!?いや、待て待て。カズさんはそんな約束破ったりはしないでしょ。じゃあ他に知ってる人となると、昭栄?アイツか、アイツが言っちゃったのか!?内緒だって言ったじゃーん!!(信用皆無)
そうと決まったわけでは無いのに、今ここには居ない昭栄に怒りを向ける。
あああ、何がメールに書かれているんだろう、怖い怖すぎる!昨日だって与っさんうちに来たのに、不機嫌な顔して帰っちゃったし、お、おお怒ってる?まだ怒ってらっしゃいますかー!?
そんな考えにひとり不審にわたわたとその場で慌ててぐるぐる歩き、見るのは怖いけれどそれでもメールを見ないわけにもいかなくて、恐る恐るボタンを押してメール文を表示させる。

     『 今どこに居る? 』

は?え?そんだけ?怒ってるわけじゃ、ないの、かな?
どこに居るって、もうすぐ家に着くけれど。うん?いつもならこの時間は私が家に居るの知ってるのに今居る場所を聞いてくるって事は、私が家にまだ帰ってないって知ってるって事?
うーん?と首を傾げつつも、いちおうメールを返す事にする。
『い、ま、帰ってるとこだ、よー。もうすぐ家に着く、よ。』
と、送信!何だろ、何か用があるのかな。あー、昨日うちに来たのにすぐ帰っちゃったから、今日改めて話をしようとしてるのかな?
え、改めて話?そ、それってお説教?おおお怒られるんでしょうか、やっぱり!?
ぎゃああ!メールの返事するんじゃなかったーーー!!にっ逃げたい!逃げ出したい!まっすぐ帰るのやめてどっかで時間潰して・・・
なんて考えていたら、家のある方角から走るような足音が聞こえてきた。家はもうすぐそこ。そしてさっきのメールを返信した後、って事は・・・?
「朱里!」
ぎゃあああ!!出たーーーー!!
予想通りに与っさんがこっちに向かって走ってきた事に飛び上がって、思わず叫んでしまった。
「ぎゃあって何じゃい。俺はおばけか」
ちちちちが、そうじゃなくて、えーと、あは、あははは〜?
テンパって上手い言い訳なんか出てこなくて、笑って誤魔化してみる。そんな私に与っさんは首を傾げて、ハアと溜息を吐いた。
「お前、こげん遅ぅまで何しとったと?」
え、えっとね、もうすぐうちの学校、文化祭があるから・・・それの準備にかかりきってて、
「ああ、もうそげん時期か。お前んとこの学校、行事早かやったもんな」
う、うん・・・
「ばってん、こげん遅ぅまで残って準備やなん、危なかやろ。真っ暗やし」
や、でも皆同じくらいだし、暗いったってまだ9時だよ?平気平気。
「アーホ。お前も仮にも女なんやけん、こげに遅かなん危なか」
真剣な表情でそんな事を言われて、ドキリとする。うっわぁ、相変わらず与っさんてば優しい!紳士!でもね、その『仮にも女』ってのはいただけませんわよ、れっきとした女ですーー!
それよりも与っさんがどうしたの、だよ。何でうちの方から来たの?もしかして私ん家に行った?
「ん・・・ああ。ちょい、話・・・あって」
話?そういえば昨日も話があるって家まで来たよね。何?おっおお怒られるのは嫌だかんね!お説教はご勘弁ーー!
「は?怒る?なして?」
だ、だって与っさん昨日帰り際に怖い顔してたし!
「あー・・・それは、やな・・・」
口籠って頭をガシガシと掻く与っさんの顔をじっと見つめる。この辺は外灯が少なくて、表情がよく見えない。与っさん何か困ってる感じ?何で?
なかなか話し始めない与っさんの顔をじーっと見続けていると、ぐいっと頭を後ろへと押された。
ちょっ何!?
「あんまこっち見んな!」
えええ、何それ。だって与っさんの顔暗くて見えないんだもん。全然話し始めないしー。
「話す!話すけん、じっと見てくんなや!」
ぶー。何だよ、見てたらダメなんて今まで言った事ないじゃんかー。いいよもう、じゃああんまり見ないようにするからさ。話って何?
「あー、その、な・・・俺、」
うんうん、何?
「・・・っ、き、昨日!昨日来とった男て誰じゃ!?」
へ?昨日来てた?って、うちに?
「そう!誰なんじゃ」
昨日、は〜・・・
うーんと、別にこんなの隠しとく必要も無いよね。昭栄は今日ちゃんと部活に出てるはずだし、サボった事も謝ってるだろう。言ってもいいか。
昨日はね、昭栄がうちに来てたの。
「は?タカ、が?・・・なしタカがお前ん家まで来たと?」
うお!?まっまた声がすんごい低くなってるんですけど!?何でぇ!?
え、えっとね、柊さんに『存在がウザイ』って言われてー、怒られて凄まれてショック受けてどうしたらいいか分かんないって、どうすればまた仲直りできるんか相談に乗ってくれ、って。
「そ、んだけか?」
うん、そんだけだよ。もうさー、昭栄ってばめそめそ泣いてばっかで「どげんすればよかー、なぁ、どげんすればよかやと思う?」ってしつこくってさ。とりあえず謝り倒しとけ、としか言えなくって呆れちゃったわよー。あ、そうだ、昭栄と柊さん、ちゃんと仲直りできてた?
「あ、ん〜、どうやろ、な。今日の部活で見る限りは喧嘩しとうようには見えんかったし、つうか今日ばタカの奴、カズに一方的に怒鳴られて蹴られて萎れとったなぁ」
カズさんに?あらら〜、部活おサボリで怒られちゃった?
「いや、その辺はようわからんけん。俺も今日のカズには怖ぁて近付かんようにしとったし・・・。カズばバリ機嫌ば悪ぅて鬼みたく怒鳴っとったったい」
うっはぁ、何やってんの昭栄。ちゃんとカズさんにも謝ったのかー?ま、昭栄だからどうでもいいや。(酷)
ところでさ、話ってそれだけ?でもそれは昨日家に来てからのものだから、他にも話あるんじゃないの?
「へ?いや・・・まぁ、うん」
なーによぅ、そんな話し難い事なの?
「話し難いっちゅうか・・・」
あーもう!焦れったいなぁ、何なの、さっさと言う!こういうので待たされるの嫌いなんだってば!
「や、その・・・」
何だろ、何でこんなに口籠るわけ?はっ!?もしかして、私に好きな人が居るって事バレて、それでようやく教えてくれる気になったとか?
な〜んだ、与っさん照れちゃって言い難くてしどろもどろになってんだ。かーわいいなぁv
与っさん、与っさん。
「え?あ、何や?」
与っさんが照れ屋なのは分かってるからさ、無理して言わなくてもいいよ?
「え、ええっ!?な、おまっ!?」
うぷぷ、やーだ本当可愛い!こんな暗がりの中でも分かるほどに顔真っ赤にしちゃって。そりゃ与っさんの好きな人はすんごい気になるけど、すーんごく気になるけど!でも無理矢理聞き出すのもなんか悪いじゃない?ていうか、虐めてる気になっちゃうよ。
うん、与っさんが言いたくなったら、でいいから。私はいつでも待ってるし。
「うっ。いや、う〜〜・・・」
あはは、だから良いってばそんな唸るほど悩まなくてもさ。そうだよねー、確かに私には話し辛いよね、ほら私ってこんな性格だし?からかわれるのが目に見えて分かるってのに言えやしないよねー。
「・・・は?おい、ちょ、」
でもね、そんな心配しなくっていいから。からかったりなんかしないよ、私応援するから、与っさんの恋!
「は?・・・はぁ!?待て。お前何の事言うて・・・」
ん?だから、与っさんの好きな人なんて知らないけど、応援はするからって言ってんの。応援するからにはその人の事教えてほしいけど、与っさんが言い難いなら聞いたりなんかしないから、言いたくなったら教えてよね?
「ちっ、違、お前それ違うって!」
あ、こんな遅くに私となんか会ってたら誰かに見られたりしたら勘違いされちゃうよ。与っさんもう帰った方がいいよ。私も今日は疲れたしさっさと帰って寝るねー、じゃあね!
「ちょっ、朱里ーー!?」

与っさんの呼び止める声にバイバイと手を振って、家へと駆け出す。与っさんの好きな人の事は聞けなかったけど、それでも与っさんが私に教えてくれようとしてくれたってのが凄く嬉しい。良かった、私の独り善がりじゃなくって。与っさんも私の事、友達だと思ってくれてたんだー、うふふv
それが思いっきり逸れに逸れた勘違いだとは思いもせずに、私はくふふと笑いながら上機嫌に玄関を開けた。

後にポツンとひとり残された与っさんはというと、私が居なくなっても呆然とその場に立ち竦んでいた。
「ちょ、おい、違うっちゃろ、何、え?・・・・・・どげん勘違いしとっとや、アイツはーー!!おっ俺は、俺はっ、うがぁぁあああ!!」

与っさんがそんな風に頭を抱えてしまった事など、知る由もない。



このお話は勘違いっ子ばかりですね、あはは☆『あゝ、無情』って正に与っさんの心境ですね!(とっても酷い)
あ、柊さんの事件勃発のところ入れるの忘れた・・・orz 次回の私の回で入れれる、かな?(汗)